金鶏の波が                    

  ささやき                     

  暗き朝を                     

  誘惑している                   

                             

  まどろむばかりの                 

  騒がしい美は                   

  甘い声を                     

  静かに漏らす                   

  月の満ち欠けを                  

  感じている                    

  だれもいない町に                 

  ただ一人                     

  紅い人、が                    

  星を呑み込む                   

  溶けた骨の下に                  

  立っている                    

  紺碧色の膜                    

  靡くは、切情

  体を駆け抜ける                  

  ぼやけた霧の狭間で                

  温かい皮膚の匂いのする              

  わたしの                     

  手が                       

  秘かに泣く                    

                          

  リズム、                     

  干乾びた爪が踊り

  あなたの喉が                   

  群れて                      

  夢を見てる                    

  淡く                       

  儚い

  殻のなかで

  閉じ篭ってしまう

  ありのままの

  尖った血

  それが

  理由

 

  過ちを

  知りすぎている

  上澄みに消え

  耳に届くのは

  鮮やかな

  呼吸、

 

  かなしいほどの夜を

  見つめているのは

  皇かな

  うるめく朝日

  閃光を流れる

  青い体液

  溺れてゆく

  月光が耳元で

  熱を持ち始め

  艶めく熱情

  は、

  あなたの声に

  よく似ていて

 

  逃げようか

  逃げてみようか

  果てのないところまで

  深海が

  頂が

  あなたを

  しきりに

  起こしはじめる

 

  まっさらな

  暗がりに

  聞こえてくるのは

  金鶏の

  波

 

 

 

 

 

 

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